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H22.4月7日未明に亡くなられたプロ野球・巨人・内野守備走塁コーチ 木村拓也さん(37才)を突然襲った「くも膜下出血」を覚えていらっしゃいますか?
4月2日試合前の守備練習中、突然胸を押さえて倒れた映像がテレビで報道されると自分のことのように恐怖を感じてしまった人も多いことでしょう。30~40代のまだまだ若い人が急死される事が私の身近な人にも多く予防できるものなら予防したいと思うのですが、いかがでしょうか。
現在、くも膜下出血死亡者は約1万5千人で、脳梗塞・脳内出血を含む脳卒中の死亡者は年間13万人です。がんや心臓疾患に続いて3番目に多い死亡原因です。
脳の重さは体重の約2%に対して、脳の酸素消費量は全身の20%、ブドウ糖は全身の25%も消費します。この為、脳の血管が詰まって(脳梗塞など)、血液が途絶えると5~15分で脳細胞は死んでしまいます。
そのうえ、梗塞を起こして死んだ細胞の周りには、ひん死の状態の細胞(ペナンブラといいます)が数多くあり、これまで死んでしまうと大変な後遺症が残ります。
このペナンブラの脳細胞にたくさん血液を送る事が出来れば後遺症は少なくてすみます。この時間は、発作期から1~12時間以内といわれています。
一般的に医学用語では「無症候性脳梗塞」や「一過性脳虚血発作」などと呼ばれ、その名のとおりあまり大きな症状として現れず、症状があってもふつう一時的なもので短時間で回復するため軽く考えられがちです。
これを放置しておくと、5年以内に約3割の人が脳梗塞の発作を起こします。いわば、皮膚のシワやシミのようなもので、加齢によってだれにでも起こりうる脳の老化現象です。
に隠れ脳梗塞がある。
一見元気そうに見えても小さな脳梗塞は多くの人に発症している。
2003年6月23日私の夫が脳梗塞で入院してしまいました。
日頃店頭でアドバイスする側の薬剤師なのですが、“まさか”私達の身にふりかかってくるとは思いませんでした。特に血圧が高いこともなく、多少糖尿気味かなあくらいに思っていました。
タバコは1日ショートホープ30~40本、多い時は50~60本!缶ビールは毎晩500ml 3~4本、朝食は食べずに飛び出し、菓子パンやちょっとつまみ喰いもしていたようです。ひどい生活習慣だと思います。発病する前に歯が何本か抜けたりしたこともあって、お昼のお弁当には手をつけず喉越しの良いカップラーメンを食べる日が続き、本来ラーメン好きな人なのでお汁まで全部飲んでいました。カロリー的にも心配でしたがいつも口うるさい私の言うことなど中々聞いてくれませんので見て見ぬ振りをしていました。
夫の話によると、その日は朝から言葉がひっかかり上手く喋れず、声も出にくかったようですが、「失語症か疲れか」くらいに思っていたようです。また、後日考えるとカッターシャツのボタンがかけにくかったとも言っていました。なんだか不機嫌な感じでしたが、日頃から口数が少ない人ですので、そんな大事になっているとは思いもしませんでした。夫もいつもと変わらず一日の仕事を終えて家に帰り、缶ビ−ルを飲もうとしていたようでしたが、口に入れたはずのビールが麻痺を起こしていたのか、口の横からこぼれて上手く飲めないようでした。
毎月のお客様へのお便りなどで「隠れ脳梗塞」の資料を作ったり、前ぶれ症状などもお話していたので「何かおかしい!!」と思い直ぐに救急外来に連れて行きました。それから即入院生活です。今まで病院に入院したことなど一度もない元気な人ですので、声が一語も出ない現実に本人が一番ショックだったことでしょう。発見が早かったのが不幸中の幸いで軽い症状で済んで運動麻痺も出ず、多少の言語障害で済んだのはラッキーでした。血液検査の結果からヘモグロビンA1cが8.4ということで完全な糖尿病になっていました。歯が抜けたりしていたのもそのせいだったのでしょうが、病院嫌いの夫は「店が忙しい事」を理由に中々病院にも行ってくれませんでしたので、ひどくなっている事さえ気付きませんでした。ただ 数値の割には、目にも、腎臓にも症状が出ていなかったのでホッと一安心しました。
(※HbA1c(ヘモグロビン・エイ・ワン・シー):赤血球中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの。この値は採血時から1~2ヶ月間の平均血糖値です。標準値:5.3~5.8)
まずは血液をきれいにしてどんどん血流を良くすることを考えて入院した翌日から、松葉エキス 1日1/2本、田七人参、五浄心、牛黄の製剤、 など高額ですが命に換えられませんのでしっかり飲んでもらいました。飲み込む事が大変だったようですが、お薬の事には知識もある夫ですので早く良くなろうと一生懸命だったようです。
糖尿の方も病院のお薬と併用して柳糖仙、シノミッテルなどの漢方薬を飲みましたのでA1cの数値も8月20日には7.1、9月30日には6.6、10月28日には6.0と順調に下がってくれました。退院後は「ことばのリハビリ」のためにも店頭に立ち、朝はご飯とおみそ汁、お昼は野菜いっぱいの私の手作り弁当、夜はカロリーカットの350mlのビールや発泡酒1~2本で過食をしなくなりました。もちろんタバコはお医者様からもダメと言われていたので止めてくれていたはずです。
この体験は大変な事でしたが、この病気をしなければ生活習慣や食生活を変えることができなかったかもしれません。夫の病気を通して私もまたいい加減になり易い日々の食事がいかに大切かを再認識しました。
40~50代の働き盛りの男性にありがちな身体(健康)への過信は、積み重なったストレスや疲労で一大事を招いてしまうことを身を持って知った次第です。「オレは大丈夫!」が口ぐせの旦那様もいざ病気で入院すると奥様の負担は、肉体的、精神的、経済的にも三重にも大変です。実際に店頭でのご相談で看病疲れからゲッソリ痩せられ、奥様の方が倒れてしまうのではないかと心配になる方もいます。万一 後遺症が残った場合、自信を失った男性にウツ傾向も強く出るようで、メンタルケアも大切です。
こんな自分達の体験を書くのは恥ずかしい事ですが、大切な夫は一家の大黒柱ですので、元気であってこそ家族皆が笑顔であれると思います。
お酒もお仕事柄仕方がないでしょう。美味しい物も食べてほしいのです。
でも身体にだけは気を付けて誤った生活習慣を直して、いつまでも健康でいてほしいのです。
家族が大切だからこそ、御自身の身体も思いやり、日々元気でいて下さいね。
“ころばぬ先の杖”願わくば私達のような体験もせず予防して頂きたいのです。
あれから7年8ヵ月経ちますが、おかげ様で変わらず店頭に立ち、誰も脳梗塞をした人とは解らないほどです。でも昔と違うのは自然薬や漢方などで日頃の養生をするようになったことです。あい変わらず大好きなラーメンを食べたり多少の偏食はするのですが、自分でもコントロールをしているようです。
少し気がゆるんで、お酒の量も増えたりすると、妻の役目として口やかましく言って、警告をうながしてはいますが!!
皆様も「まあ大丈夫だろう」とあなどらず気になる事があればご相談下さいね。
2011年2月吉日 澄川すみえ